
インサイドセールスの立ち上げは、人を採って電話をかけ始めることではない。特に、スタートアップや新規事業で営業をゼロから立ち上げる場面ほど、この考え方が後で効いてくる。誰のどんな課題を解決し、誰からいくら受け取るかという売れる条件を先に定め、その条件で商談が生まれるかを検証し、再現できる形に整える順番で進める。この順番を飛ばすと、活動量を増やしても受注につながらない。この記事では立ち上げの手順を示したうえで、これまで10社以上の営業立ち上げを支援する中で見えた、つまずく会社の共通点を3つ挙げる。最後に、内製と外注のどちらを選ぶべきかの判断軸を整理する。
インサイドセールスは、訪問せずに電話・メール・オンライン商談で見込み客にアプローチし、商談機会を作る営業活動である。
外勤営業が1日に会える数には限りがあるが、内勤なら移動が無いぶん多くの相手に接触できる。フィールドセールスとの違いは、インサイドセールスがその前段の商談機会づくりを担う点にある。リードを受け取って商談化するSDR型と、こちらから新規開拓するBDR型に分かれる。どちらを先に立ち上げるかは、すでにリードが溜まっているか、それとも新規開拓から始めるかで決まる。
立ち上げは次の順番で進める。各段階を飛ばさないことが、後の空回りを防ぐ。
第一に、誰に何を売るかを定める。ターゲットとなる企業の条件、その相手が抱える課題、自社がそれをどう解決するかを言語化する。ここが曖昧なまま次に進むと、後工程のすべてがぶれる。
第二に、リストとトークを用意する。定めた条件に合う企業リストを作り、相手の課題に沿った話し方を設計する。商品の説明から入るのではなく、相手の課題から入る組み立てにする。
第三に、小さく実行して検証する。少数のリストにアプローチし、どの相手のどの訴求が反応するかを見る。ここで得たいのは件数ではなく、何が効いて何が効かないかの判断材料である。
第四に、再現できる形に整える。検証で見えた勝ちパターンを、誰がやっても再現できる手順に落とす。トークスクリプト、対象の絞り込み基準、追客のタイミングを一つのマニュアルにまとめる。ここまでやって、初めて人を増やしてもぶれない状態になる。
第五に、人を増やして拡大する。再現できる型ができてから、担当者を増やす。型がない状態で人だけ増やすと、属人的なばらつきが組織全体に広がる。
手順そのものは難しくない。つまずく会社は、手順を知らないのではなく、特定の段階で同じ落とし穴にはまる。
10社以上の立ち上げを支援する中で、頓挫する会社には共通する要因があった。代表的なものを3つ挙げる。いずれも根は同じで、誰に何をどう売るかという型が定まらないまま走り出している。
最初の要因は、顧客の声を聞かずに立ち上げてしまうことである。
誰のどんな課題を解決し、誰からいくら受け取るかという、商品としての根本が固まっていない状態で動き出す。その結果、商品ありきで話を進めてしまい、相手から「求めているのはそれではない」という反応を受ける。売り先も定まらず、むやみに広くアプローチすることになる。すると、反応が悪いのは商品が悪いのか、売り方が悪いのかの切り分けができなくなる。検証のしようがない状態に陥る。
立ち上げの初期に必要なのは、活動量ではなく、顧客の課題を確かめる対話である。ここを飛ばすと、後のすべての工程が根拠を失う。
次の要因は、社長や役員が営業を一人で抱え込むことである。
役員はなぜこの事業をやるかという文脈の理解が深い。市況がどうなっているか、競合がどう動いているか、その中で自社が解決できる顧客の課題はどこか。こうしたバリュープロポジションの言語化と整理の解像度が高い。だから本人が動けば、ある程度は売れる。
問題は、その売り方が属人的なことである。役員の頭の中にあるものが言語化されていないと、他の人に渡せない。役員の限られた時間の中でしか売れず、組織として拡大しない。一人で売れてしまうがゆえに、型を残す作業が後回しになり、いつまでも本人依存から抜け出せない。
3つ目の要因は、設計がないまま営業代行へ依頼することである。
営業代行には成果報酬型が多く、アポイント1件あたり3万円程度で請け負う会社が一定数ある。型が定まらないままこれに頼ると、受注につながりにくい微妙なアポイントが大量に届く。合わないアポイントを減らそうと条件を絞ると、今度は成果報酬の仕組み上、代行側はアポイントが取りづらくなる。すると優先度が下がり、アポイントの供給そのものが細る。
根本にあるのは、どのターゲットなら本当に売れるのか、何件受注すればどれだけのリターンが得られるのかという設計の不在である。設計も売り方もないまま、アポイントだけを外部から買おうとすると、このねじれが起きる。
3つの要因は、表面の症状は違っても、原因は1つに行き着く。売れる型がないまま実行を急いでいる。立ち上げの成否は、人の数でも活動量でもなく、型を先に作れるかで決まる。
立ち上げを内製でやるか外注に頼るかは、自社の状況で判断が分かれる。
内製が向くのは、誰に何をどう売るかの型がすでにあり、それを動かす人員も社内にいる場合である。型があるなら、あとは自社で人を育てて回す方が、ノウハウが社内に蓄積される。
外注が向くのは、型づくりから人員確保までを自社だけで進めるのが難しい場合である。ただし、インサイドセールスの立ち上げを外注するにも種類がある。アポイント獲得の実行だけを請け負う営業代行は、すでに型がある会社には合うが、型がない会社が頼むと前述のねじれに陥る。
型が定まっていない会社が外注を選ぶなら、実行だけを請け負う代行ではなく、型づくりから一緒に進め、最終的にその型を社内に残す支援を選ぶ必要がある。立ち上げのゴールは、外部が動き続けることではなく、自社だけで回る状態を作ることにある。外注を入れても、内製化につながらなければ、契約が切れた瞬間に元へ戻る。
立ち上げを検討するなら、まず自社に売れる型があるかを確かめてほしい。型があるなら内製か実行代行、型から作る必要があるなら、型づくりと内製化までを伴走する支援が合う。
ディーノは営業開発代行として、これまで10社以上の営業立ち上げを支援してきた。実行しながら型を作り、その型を社内に残すことをゴールに置いて伴走している。支援先のARRなど年間の売上指標が、支援半年程度で1.2倍から1.3倍に伸びた事例がある。スタートアップの営業代行や、インサイドセールスの代行会社を探している段階でも、まずは自社に売れる型があるか、から一緒に確かめる。インサイドセールスの立ち上げや、社長一人で営業している状態からの脱却を検討しているなら、ディーノのサービス資料をご覧いただきたい。