大手企業の新規開拓方法|DM月300通から始める4ステップ

大手企業を開拓する4ステップ
ステップ | やること | 渡氏の実数・実例 | 注意点 |
|---|---|---|---|
1. 認知(脳内SEO1位) | 提供領域を絞り込み、何の会社かをSNSで発信し続けて、相手のニーズが生まれる前に想起される状態を作る | 「マーケ・デザイン何でもやる制作会社」から「パワポ資料作り」に絞ったことで、創業期から想起されるようになった | 「何でもやります」の発信は誰の記憶にも残らず、紹介も生まれない |
2. 接点(One to One DM) | 既存の人脈と共通点のある相手に、友人に送る温度の個別DMを送る | Facebookで毎月100通以上、Xと合わせて毎月300通。東京海上日動との2年以上の取引は、元部下への「最近何してる?」から始まった | 同じ文面を大量に送るテンプレ爆撃は、受け取る側に警戒されて無視される |
3. 紹介(パートナー) | 自社の前工程を担う上流コンサル会社と組み、紹介が増えるほど返す設計にする | 太く取引するパートナーは10社。創業期は昔からの飲み友達である才流、セールスリクエストなど数社から始めた | 創業初期に20社を集めて宝探しをすると、経営陣の時間が足りなくなる。2〜3社に絞る |
この記事の監修者
今回のゲスト:渡雄太氏

渡 雄太
シンクパートナーズ株式会社 代表取締役
東北大学経済学部卒業。双日株式会社を経て、2014年からB2Bスタートアップの事業開発に携わり、PRONI株式会社取締役、株式会社キャスター執行役員を歴任しました。2018年10月に株式会社wibを設立し、2023年以降はスタートアップと中小企業のアドバイザリー、投資、ハンズオン支援を手がけています。2026年6月に社名をシンクパートナーズ株式会社へ変更しました。東北大学スタートアップ事業化センターの特任准教授(客員)、経済産業大臣登録の中小企業診断士としても活動しています。
シンクパートナーズは、採用ピッチ、会社紹介資料、営業資料、IR資料などBtoBのコンテンツを制作する会社です。自社開発のAIエージェントツールで制作を効率化しながら、人が伴走して仕上げる形を取っています。渡氏はこの形を「FDEのデザイン・マーケ特化版」と表現しています。公開事例には東京海上日動火災保険、りそな銀行が並び、受注実績は200社を超えます。
渡氏はディーノの顧問も務めており、ディーノが営業代行全般から大手開拓特化に絞り込む過程にも助言をしています。Xでは起業前から発信を続け、YouTubeでは会社経営の気づきを週1回更新しています。
関連リンク:公式サイト・X・YouTube「THINKAHOLIC」
脳内SEO1位を取るための発信と絞り込み
観点 | 絞り込む前 | 絞り込んだ後 |
|---|---|---|
シンクパートナーズの掲げ方 | マーケとデザインを何でも引き受けるBtoBに強い制作会社 | パワーポイント資料作りに強い制作会社 |
ディーノの掲げ方 | 営業代行を全般的に引き受ける会社 | 大手企業の新規開拓に特化した営業代行の会社 |
相手からの見え方 | 何が得意なのかが伝わらず、困ったときに思い出されない | 「資料なら渡さん」「ABMで大手に行くならディーノ」と想起され、紹介が届く |
渡氏が繰り返し使う言葉が「脳内SEO1位」です。相手に課題が生まれた瞬間、最初に自社を思い出してもらえる状態を指します。大手企業の発注は、担当者のニーズが発火したタイミングで動くため、その前に想起されているかどうかで勝負が決まります。
渡氏はこれをタクシー広告やテレビCMにたとえます。広告を見る人の大半は今は対象外ですが、見続けているからこそ、自分に必要になったときに迷わずその商品を選びます。渡氏は雇われ役員の時代からSNSでの発信を続け、自分が何者かを先に知ってもらう努力をしてきました。
発信より先にやるべきことが、提供領域の絞り込みです。領域が広いままでは、どれだけ発信しても相手の記憶に残りません。絞り込みの考え方は、差別化を扱った記事でも解説しています。
One to One DMとテンプレDMの違い
観点 | One to One DM | テンプレDM |
|---|---|---|
送る相手 | 元同僚や元部下、同じ大学など共通点のある相手 | 業種や役職で抽出した不特定多数 |
文面の温度 | 「最近何してる?」など友人に送るカジュアルさ | 自社サービスの説明が中心で、営業だとすぐ分かる |
アポの求め方 | 10分だけなど、相手の時間を奪いすぎない枠を提案する | 30分か60分を求める |
受け取った側の反応 | 「そういえばあれを相談したかった」と会話が始まる | 警戒され、読まれずに無視される |
渡氏はFacebookだけで毎月100通以上、Xと合わせて毎月300通のDMを送っています。それでも同じ文面を一斉に送ることはしません。受け取った相手から「営業っぽさがない」と言われるのは、一通ずつ相手との関係を踏まえて書いているからです。
東京海上日動との取引も、このDMから始まりました。渡氏がPRONIの取締役だったころに採用した新卒社員が、のちに東京海上日動へ転職していました。「最近何してる?」と送ったDMから資料作りの相談が生まれ、担当部署をつないでもらい、取引は2年以上続いています。大手企業の中にいる知り合いが、代表電話では届かない部署への入口になる例です。
受け取る側としての実例もあります。YouTube制作代行を手がける経営者から届いたDMは、「プロフィールに同じ大学とあったので送りました」という一文から始まっていました。別の企業の社長からは「10分でいいので時間をください」とDMが届き、その後の会食を経て事業提携の商談に進んでいます。共通点を探して文面を作ることと、他の営業DMとは違う求め方で差別化すること、この2つが返信されるDMの条件です。
パートナー施策で紹介を増やす設計
設計項目 | 渡氏のやり方 | 狙い |
|---|---|---|
組む相手 | マーケティングコンサル、MVV策定コンサル、イネーブルメントコンサルなど、自社の前工程を担う上流の会社 | コンサルの後に資料やサイトへ落とし込む工程が必ず発生し、紹介が自然に生まれる |
絞り込む数 | 創業初期は本当に応援してくれる2〜3社。現在太く取引するのは10社 | 経営陣が使える時間は限られるため、深い関係から質の高い紹介を得る |
金銭のインセンティブ | 紹介が増えるほど料率が上がる段階制。トスアップだけでも一部を支払う形も試している | たくさん紹介してくれる相手に多く返し、紹介したくなる理由を作る |
金銭以外のお返し | VCの投資先向けに1時間の無料勉強会を開く。パートナーが主催するイベントに参加して会場を盛り上げる | 相手の困りごとを先に解決し、相手の中で脳内SEO1位を取る |
渡氏はパートナー経由の紹介を、自社の受注の柱の一つにしています。上流のコンサル会社が支援した後には、資料、Webサイト、noteなどのコンテンツへ落とし込む工程が残ります。AIだけで作ったものでは質が足りないと判断されたときに、シンクパートナーズが紹介される流れです。
金銭以外のお返しでは、VCとの提携が代表例です。ANOBAKA、インキュベイトファンド、ジェネシア・ベンチャーズの投資先を集め、AIだけでは良い資料ができない理由をテーマにした無料勉強会を開いています。イベントの主催者は経営者の集客に苦戦するため、現地で会場を盛り上げる経営者はそれだけで大きなギブになります。
創業期に渡氏へ紹介を出したのは、才流の栗原氏やセールスリクエストの原氏など、以前から交流のある経営者でした。闇雲に提携先を増やすより、応援してくれる相手に会いに行くことが、初期の紹介を生みます。
取引先を広げるアカウントマネジメントの手順
手順 | 内容 | 渡氏の実数 |
|---|---|---|
1. リストを集める | 受注した会社、失注した会社、個人的に付き合いのある会社を、濃いハウスリストとして一つにまとめる | 受注実績だけで200社強 |
2. ティアで分ける | 自社の話をまた聞いてくれそうかどうかで、企業をランク付けする | 「自分たちの話をまた聞いてくれそうか」を基準にランク付け |
3. 最優先を絞る | 丁寧にコミュニケーションを取る企業を、営業チームが回れる数に絞る | 最優先は20社 |
4. 1社ずつ設計する | 最後に取引した時期、支援内容、次に刺さる提案を企業ごとに決める | 資料制作1本50万円の単発から、継続制作への切り替えを狙う |
5. 接触日を決めて動く |
シンクパートナーズの取引は、資料制作1本の単発案件から始まります。会社紹介資料を1本50万円で作るだけで終われば、LTVは上がりません。渡氏はこれまで、自然に生まれる追加発注だけで事業を回していました。
資金調達を経て事業を伸ばす段階に入り、その偶然に頼るやり方をやめたのが今回の取り組みです。ABM(アカウントベースドマーケティング)やアカウントプランニングは誰もが知る手法ですが、対象を20社まで絞ることで、一社ごとの提案を作り切れる量になります。
ファウンダーフィットする開拓の型を先に決める
渡氏は、広く打つ施策が自社には合わないと断言しています。フォーム営業を大量に打って広げるやり方で勝てる会社もあります。一方でシンクパートナーズは、One to Oneに近い接点で勝ち、その型をDM、パートナー、アカウントマネジメントのすべてに通しています。
アーリーフェーズの会社は、代表自身の動き方が新規開拓の成果を左右します。世の中で正しいとされる手法のうち、どれが自社と代表に合うかを言葉にしてから施策を選ぶと、打率が上がります。売れる型を決めないまま他社の成功施策を真似ても、リソースが分散するだけです。
よくある質問
Q. 大手企業の新規開拓は何から始めればいいですか?
A. 提供領域を絞り込み、「何の会社か」をSNSで発信するところから始めます。相手に課題が生まれたときに最初に思い出される状態(脳内SEO1位)を作ってから、個別DMやパートナー経由の紹介で接点を作ると、大手企業の担当部署にたどり着けます。
Q. 営業DMは月に何通送ればいいですか?
A. 東京海上日動火災保険やりそな銀行と取引を続ける渡雄太氏は、Facebookだけで毎月100通以上、Xと合わせて毎月300通のDMを送っています。数より重要なのは、全通を相手ごとの個別文面にすることです。同じ文面を大量に送ると警戒され、無視されます。
Q. 返信される営業DMには何を書けばいいですか?
A. 同じ大学、元同僚など相手との共通点を冒頭に書き、友人に送る温度で書きます。アポは30分や60分ではなく「10分だけ」のように、相手の時間を奪いすぎない枠を提案すると、他の営業DMと差別化できます。
Q. 創業初期のパートナーは何社と組めばいいですか?
A. 創業初期は、自社を理解して応援してくれる2〜3社に絞ります。経営陣がパートナーに使える時間は限られるため、20社を集めて紹介を待つより、少数と深く付き合うほうが質の高い紹介が生まれます。
Q. 大手企業との取引を単発で終わらせないにはどうしますか?
A. 取引先をティアでランク付けし、最優先の企業を絞ってアカウントマネジメントを行います。渡雄太氏は200社強の受注実績から20社を選び、最終取引日、支援内容、次の提案、接触日を企業ごとに決めています。
まとめ
大手企業の新規開拓は、提供領域を絞って脳内SEO1位を取り、個別DMと少数のパートナーで接点を作り、取引後は最優先の企業に絞ってアカウントマネジメントを行う流れで進めます。渡雄太氏は毎月300通の個別DM、創業期2〜3社のパートナー、200社強から選んだ最優先20社という形で、この流れを実行しています。どの段階でも共通するのは、自社と代表に合う売れる型を先に決め、広く打つより絞ってやり切ることです。
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