ABMの効果の計算方法|費用対効果を「1年間の粗利」で判定する投資回収シミュレーション

「ABMを始めたいが、社内で費用対効果を説明できない」「営業代行に払う費用が回収できるのか分からない」。この記事は、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)や大手開拓への投資を判断する立場の方、稟議を書く担当者の方に向けたものです。
ABMは、狙う企業を絞り込み、1社ずつ深くアプローチする手法です。大手企業は検討期間が長いため、成果が出るまでに時間がかかります。そのため、1件あたりの獲得単価(CPA)だけを短期で見ると、「高い」「効果がない」と判断されがちです。
この記事では、ディーノがABMの実行計画で使っている「投資回収」シートの構造をもとに、ABMの効果を計算する方法を解説します。
ポイント
ABMの効果は、短期のアポ単価ではなく、受注後の単価まで含めた「1年間の粗利が投資の何倍になるか」で計算します。
入力は「費用、活動量、到達率、アポ化率、受注率、受注後の単価」の6つ。ここから累計のアポ単価、期待受注数、投資に対する粗利の倍率を出します。
1商談に払える上限は「1受注の粗利(または売上)×商談からの受注率」で出せます。1受注100万円・受注率20%なら、上限は20万円です。
ABMは時間がかかるため、評価する時期と、到達率・アポ化率などの中間指標を先に決めておきます。
ABMの効果を計算する考え方
短期のCPAではなく、1年間の粗利で見る
ABMの費用対効果を測るとき、まず見るべきは「アポ1件にいくらかかったか」ではありません。受注したあとにその顧客からどれだけの粗利が得られるかまで含めて、投資と比べます。
大手企業との取引は、初回の契約より、そのあとの継続や拡大で大きくなることが多いからです。ディーノの投資回収シートでも、受注後の単価構造まで入力し、「1年間の粗利」で判定する形にしています。
投資回収シートの構造
シートは入力欄に数値を入れると、結果が自動で出る形です。
区分 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
入力 | 費用 | 代行費、郵送物、ツールなどの総額 |
入力 | 活動量 | 架電数、送付数などのアプローチ数 |
入力 | 到達率 | アプローチのうち担当者に届いた割合 |
入力 | アポ化率 | 到達のうちアポになった割合 |
入力 | 受注率 | アポのうち受注した割合 |
入力 | 受注後の単価 | 1受注あたりの年間売上と粗利率 |
出力 | 累計アポ単価 | 費用 ÷ アポ数 |
出力 | 期待受注数 | アポ数 × 受注率 |
出力 | 粗利の倍率 | 1年間の粗利 ÷ 費用 |
この記事の監修者
ABMの効果の計算式
基本の計算式
上の入力から、次の順で計算します。
計算するもの | 計算式 |
|---|---|
到達数 | 活動量 × 到達率 |
アポ数 | 到達数 × アポ化率 |
累計アポ単価 | 費用 ÷ アポ数 |
期待受注数 | アポ数 × 受注率 |
1年間の粗利 | 期待受注数 × 1受注あたりの年間売上 × 粗利率 |
投資に対する粗利の倍率 | 1年間の粗利 ÷ 費用 |
記入例(架空の入力例)
以下は計算の流れを示すための架空の入力例です。ディーノの実績ではありません。自社の数値に置き換えて使ってください。
例:仮に、費用を月50万円×6か月=300万円、活動量を1,000アプローチ、到達率を30%、アポ化率を10%、受注率を20%、1受注あたりの年間売上を300万円、粗利率を60%とすると、次のようになります。
項目 | 入力・計算 | 結果 |
|---|---|---|
到達数 | 1,000 × 30% | 300件 |
アポ数 | 300 × 10% | 30件 |
累計アポ単価 | 300万円 ÷ 30件 | 10万円 |
期待受注数 | 30件 × 20% | 6件 |
1年間の粗利 | 6件 × 300万円 × 60% | 1,080万円 |
粗利の倍率 | 1,080万円 ÷ 300万円 | 3.6倍 |
この例では、アポ単価10万円だけを見ると高く感じるかもしれません。しかし、受注後の1年間の粗利まで含めると、投資の3.6倍になる計算です。どの入力値が変わると倍率が大きく動くかを確かめておくと、社内での説明がしやすくなります。
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1商談に払える上限の出し方
計算式
営業代行やABMの施策に「1商談あたりいくらまで払えるか」は、次の式で出せます。
1商談に払える上限 = 1受注の粗利(または売上)× 商談からの受注率
1受注の金額 | 商談からの受注率 | 1商談に払える上限 |
|---|---|---|
100万円 | 20% | 20万円 |
上の数値はロジックを示す例です。たとえば1受注100万円で受注率が20%なら、5商談で1件受注する計算なので、1商談に払える上限は20万円になります。
アポ単価から獲得コストを見る例
逆の方向から確かめることもできます。ディーノが説明に使っているロジック例では、アポ単価が3〜4万円で、10アポに1件受注できるなら、1件の受注にかかるコストは30〜40万円です。年間600万円規模の契約になるSaaSであれば、十分に回収できます。
1商談あたりのコストと施策の比較は、大手開拓を外注する費用(1商談あたりのコストとROI)で詳しく解説しています。
評価期間と中間指標を先に決める
短期で切らない
ABMは成果が出るまで時間がかかります。数か月で受注が出ないからと打ち切ると、仕込んだ接点が成果になる前に手放すことになります。ディーノでも、施策や媒体を短期のCPAで判断せず、再評価の時期を決めて長期で見るようにしています。
中間指標を置く
受注までの間は、次のような中間指標で進み具合を確認します。
- 評価する時期(例:開始から何か月後に判断するか)を決めた
- 到達率の目標を決めた
- アポ化率の目標を決めた
- 受注後の単価と粗利率を、営業・経理とすり合わせた
- 目標を下回った場合に、どの入力値を見直すかを決めた
フロント商材で一部を回収する考え方
勉強会やセミナーなど、有料で提供できる入口の商材を持っている場合は、その売上で施策費用の一部を回収する設計もできます。入口の商材の組み立て方は大手開拓の入口商品をつくるをご覧ください。
稟議に使える形にする
投資回収シートは、担当者が社内で説明するときにそのまま使える形にしておくことが大切です。入力値の根拠(過去の受注率、平均単価など)を横に書いておくと、決裁者からの質問に答えやすくなります。稟議の通し方は大手企業の稟議を通す提案も参考にしてください。
よくある質問
Q. 受注率や到達率が分からない場合はどうすればよいですか?
最初は仮の値で計算し、テストアプローチなど小さな規模で実際の値を取ってから置き直すのがおすすめです。仮の値で計算したことは、社内資料にも明記しておきましょう。
Q. 粗利ではなく売上で計算してもよいですか?
1商談に払える上限の計算では、粗利・売上のどちらでも出せます。ただ、投資を回収できるかを判断するなら、実際に手元に残る粗利で見るほうが安全です。
Q. 何か月で判断すればよいですか?
商材や業界の検討期間によって変わります。重要なのは、始める前に評価時期と中間指標を決め、関係者で合意しておくことです。
まとめ
ABMの効果は、費用、活動量、到達率、アポ化率、受注率、受注後の単価を入れ、1年間の粗利が投資の何倍かで計算します。1商談に払える上限は「1受注の粗利(または売上)×受注率」で出せます。ABMは時間がかかるため、評価時期と中間指標を先に決め、稟議でそのまま使える形にシートを整えましょう。
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